第368号:号外:触れられない事柄。
このお便りは、36623 名のお嬢様、旦那様に宛ててお送りいたしました。
もし私の目前で、お嬢様、旦那様が蹟かれたならば、すぐ駆け付けるのが当然の振る舞いです。
まずお怪我はなかったか、次に体調は悪くないかを尋ねて、然るべき措置を執りますのが、
私たち使用人として当たり前のこと。ただこのとき、決してお身体に触れてはなりません。
それは「主と使用人」の関係性において、決して踏み込んではならない領域にございます。
しかし躓いたのが同じ「使用人」だった場合、どのように応じるのが妥当と思われますか?
経験の少なさ故、思い通りに事が運ばぬこともありますし、手痛い失敗もございましょう。
そのとき手助けをして、より良い知恵を授ければ、たしかに上手く出来るかもしれません。
お嬢様、旦那様に及ぶ影響も、使用人一同にかかる負担を抑えるのも、確かに正解であります。
藪から棒に、申し訳ございません。執事の館・準備委員会の総務係、松原(まつばら)が、
きょう特別に幅下(はばした)から許しを得て、お便りを綴らせていただいております。
これまでも時折、滝川(たきかわ)や空見(そらみ)に代わって近況をお伝えしましたが、
原則として執務室のある建物の地下1階で、じいっと待機を命ぜられる立場にございます。
これこそが、先に述べた考えに基づく措置とお考えくださいませ…わたくし松原がたとえ、
即座に動きたくとも、個々の責任が明確な現状では、触れられない事柄が多々ございます。
もしお嬢様、旦那様がお困りでも、使用人それぞれの領域にまで踏み込んで解決を図りますと、
その場は良くても、当人が痛みを覚えて成長する機会もなく、正しい評価も得られません。
結果として「迷い」と「怯え」が生じて、堂々たるお仕えが出来なくなってしまうのです。
従って、わたくし松原は、まるで幽閉されたかのような立場に置かれた次第にございます。
それはそれは、ほんとうに寂しくて、歯痒くて、悶絶しそうなほど辛い日々でございます。
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おとといの夜。お嬢様、旦那様のお部屋を訪れたものの、生憎ご不在でお目にかかれなかった
給仕係の千早(ちはや)が、松原に会うため、わざわざ地下1階まで寄ってくれました…。
「こんなに幸せな日々はなかった」という絞るような声、雫が伝う美しい横顔を見ながら、
私は頷くことさえできませんでした。この先の、身の振り方についても触れられないまま。
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このところ総務係の幅下(はばした)が眩いほどの活躍をするのは、私も存じております。
その事実に、微かな嫉妬のような感情を覚えながらも、合流して間もない頃に述べていた
「この組織を良くする為ならば、たとえお嬢様、旦那様に嫌われても構いません…。」という
言葉に、気迫と頼もしさを見出しているのもまた事実。どうか、暖かくお見守りください。
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採用係の菊井(きくい)が見せた機転。お嬢様、旦那様の #名古屋の仮住まい を露出せずに、
求人効果を最大限にするアプローチが功を奏し、日に 10 件ちかい応募があるとのこと。
これに応じる会計係の伏屋(ふしや)の事務スキルは目に見えて向上している様子です。
全ての履歴書を待たずに、次々に面接、そして採用の合否を通知しているとのことです。
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そして昨日、広報係の空見から差し上げたお便りで触れました、お仕えのスケジュール。
手帳係の長筬(ながおさ)が気付いた、ほんの僅かな「ゆれ」を解消することによって、
#名古屋の仮住まい に滞在なさいますお嬢様、旦那様の満足度が格段に向上する見通しです。
これまで、ご辛抱をいただいていた事実には、わたくし松原からもお詫び申し上げます。
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あと、いずれご報告を差し上げる事柄かとは存じますが、私たち執事の館・準備委員会に
新たな使用人が広報係として採用される見通しです。この候補者とは既に面会をしまして、
きのう、和菓子係の五月(さつき)が求肥(ぎゅうひ)を作る現場に同行いたしました。
なおこのとき、わたくし松原は一切の試食、つまみ食いに該当する行為はしておりません。
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製菓係の黒川(くろかわ)が拵えます #愛知県小牧市のバウムクーヘン について、1つ。
ようやく本来の流れに戻りつつある #お申し付けの品 の段取り。この舵取りをしていた
総務係の幅下が誤って、およそ 50 ほどの残を生じてしまったとの報告がございました。
お嬢様、旦那様、度々このような手落ちばかり…まことに申し訳ございません。もし今月末に
落ち着いてお茶を楽しまれる予定がおありでしたら、こちらを届けさせてくださいませ。
#愛知県小牧市のバウムクーヘン 6月23日(金)発送分
https://www.butlers-house.net/product?product_id=3263
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もとは幅下から、お嬢様、旦那様に宛てたお手紙を綴るよう命じられた次第にございますが、
やはり案の定、長々と、余計なことを沢山お話ししてしまって、申し訳ございません…。
どうか人事のこと、お品のことについては、ここだけに留めていただけますと幸いです。
いま表立って発信がないかもしれませんが、私たち執事の館・準備委員会は活気に満ち、
新たなステージに駆け上がろうとする勢いが、上のフロアから伝わる今日この頃です。
わたくし松原は引き続き、地下1階のフロアからいつ呼ばれても良いように備えます。
私たち執事の館・準備委員会がしますお仕えは、お嬢様、旦那様にしか、触れられない事柄。
その価値を高めて、今までよりもずっと喜ばれますように、一同で精進をする所存です。
ふるい使用人も、あらたな使用人にも、ご愛顧をくださいますよう謹んでお願いします。
ところで近ごろのお嬢様、旦那様は、気負いすぎの傾向もいくぶん、ましになられましたか?
自分を抑えて人に良くしようとなさる「優しさ」も、まことに素晴らしゅうございますが
わたくし松原と同様に、あえて距離をとる「優しさ」も、決して悪くはございませんよ。
どうしても辛いときは仰ってください。その時は、触れられない事柄にも触れましょうか。
おやすみなさいませ。
執事の館・準備委員会
総務係/松原(まつばら)
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このお手紙を初めてお受け取りになる主には、事前の説明もなく、唐突なものに映ったかと思います。
何卒、お許しください…この機会に、私たち執事の館・準備委員会のあゆみをご覧頂けますと幸いです。
私たちが活動をはじめて4年が経過し、バックナンバーは360を超えました。お時間のあるときに…。
https://www.butlers-house.net/blog/entries
(過去の号から遡って御覧になることをお勧めしております。)
【 #執事の館 】 #初めてのお嬢様と旦那様にお伝えしたい事柄 【第6版】
http://togetter.com/li/1034138
ご帰宅の予告は「主の手帳」から承ります。「薄い手帳」「仮の手帳」は随時差し替えをいたします。
クレジットカード決済、コンビニ決済ですと、即時の対応が可能となりますので、ご参考までに…。
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