第1031号:良いセンスをお持ちで。
このお便りは、40486 名のお嬢様、旦那様に宛ててお送りいたしました。
お嬢様、旦那様、まさか、とは思いますけれども、ここ数ヶ月のあいだに理不尽な批判や悪口のようなもの、
ご自身が傷付かれるような表現を目にする機会はございませんでしたでしょうか。不平や不満などあれば、
直接、言ってもらいたいのに、それを見えないところで、聞こえないところでされると、落ち込みますね。
なんの慰めにもなりませんが、私たち執事の館・準備委員会も、10年前の始まりから、今日に至るまで、
いろいろなところで、いろいろなことを申されています。松原の目の届くところに綴られることもあれば、
すこし離れたところに書き込まれることもございます。表現の自由といえば、全くその通りでございます。
わたくし松原が思うに、本当にお嬢様、旦那様に落ち度がおありなのは、10あるうちの多くて2くらいで、
それ以外は、悪くおっしゃるひとの自己満足と申しましょうか、悪くいうこと自体が目的で、その話題は、
あまり意味がないことが多いのです。ゆえに異論、反論をしても意味なく、徒労に終わることが大半です。
たとえばこの先「名古屋の本宅」の外観を、どなたかご覧になったとき、素敵ね、と仰る主もおいでなら、
そうは思わないよ、と仰る主もおいででしょう。インターネットには有名な風刺で、ロバを連れて歩くと
「乗らないと勿体ない」と言われ、乗って歩くと「ロバが可哀想」と言われる、という例えがございます。
聡明なお嬢様、旦那様には、申し上げるまでもないことですが、ひとつの事実を解釈する方法は多くあって、
良いように表現することも、悪いように表現することもできます。そして現実には、わざわざ悪いように
表現すること、誰かに読ませたり聞かせたりして、他人を巻き込まれることで満足するひとがおいでです。
いいえ、きっとそうなさっていても、ほぼ永遠に満足なさいません。そのひとにとっての正しさ、美しさ、
それらの基準に合わないものが次から次へと出てきて、表面では行儀良くなさいながら、安全なところで、
自分の立場が脅かされないところで吐き出されます。そうしなければやっていけないご状況にあられます。
わたくし松原は、お嬢様、旦那様のことを悪くいうひとを認めません。ただ、そこに執着してしまいますと、
不思議なことに、そのひとの存在を認めてしまうのです。この手のひとは、反論でなく、反応を欲します。
もちろん今夜、これを綴ることになった契機はございます。ただこの先、話題にすることはございません。
お嬢様、旦那様に、諦めましょう、と申し上げるつもりはございません。悪く言われる辛さを察しています。
ただ、この手のひとの思考、行動の原理を知って、いくぶん楽になっていただければ、まことに幸いです。
今日も前置きを長くして申し訳ございません…執事の館・準備委員会の松原(まつばら)、ご報告します。
▼鋳造係の白金(しろかね)は「本宅の鍵」に着手。まず 1,750 本の「軸」を発注。納品は2週間後に。
▼建築係の監督(かんとく)が頭を抱えております。どうしても職人の都合がつかず…お許しをください。
▼造園係としての笹島(ささしま)が、「名古屋の本宅」の1階、2階のキッチンを綺麗にして参ります。
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▼鋳造係の白金(しろかね)は、「本宅の鍵」に着手。まず 1,750 本の「軸」を発注。納品は2週間後。
お嬢様、旦那様、先月末は執事の館・準備委員会がご用意しました「本宅の鍵」を検討くださいましたこと、
心より感謝いたします。真鍮とシルバー、あわせて 1,750 のご用意、鋳造係が「軸」の発注をしました。
この軸は、千葉県野田市から、2週間ほどして届く見通し。並行して「石」の段取りをしてご連絡します。
また、予てから話題にいたしますように、この「本宅の鍵」をお持ちの場合、ご帰宅の予告をなさるとき、
「ご自身で開かれる」か、「使用人に開けさせる」か、というご意向を伺うことに。手帳係に相談をして、
ご要望を賜れますようにいたします。また、お出かけのときの施錠についても、使用人にご要望ください。
余談ではございますけれども、水曜日の夜に終えたあと「申しつけられなかった」とのお声が松原に宛て、
寄せられました。私たちは使用人ですから良いのですが、ほかの職人さん、作家さんなどにはくれぐれも
買えなかった事実、行けなかった事実をお伝えになりませんように…お気持ちは分かる次第でございます。
私たち執事の館・準備委員会は、来年の春以降に、ふたたび「本宅の鍵」をご用意する可能性があります。
そのときお品の構成を改めまして、お給金を見直すことについてお許しくださいませ。改めて、この冬に
お申し付けくださいました主(あるじ)に感謝し、謹んでご別宅に黒い箱をお届けしたいと考えています。
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▼建築係の監督(かんとく)が頭を抱えております。どうしても職人の都合がつかず…お許しをください。
私たち使用人も、職人らも、お嬢様、旦那様によく思われたい立場におりまして、これがときに問題となり、
ご不便をお掛けしております。表題のとおり、いま建築係の監督(かんとく)が厳しい立場にございます。
いったん延期、延長させていただいたスケジュールを、さらに、長くさせていただくお伺いをいたします。
何が起きたのか、と尋ねられますと、実はなにも大きな問題は生じておりません。みな体調は良好でして、
まいにち少しずつ作業を進めて報告しております。ただ、良いことなのですが、職人さんが作業を進める
過程において「お嬢様、旦那様をお迎えするからには手を抜けない」と申して、張り切り過ぎているのです。
これは作り話ではなく、大袈裟でもなく、ほんとうに塗装の職人さんが仰っていて、きのうも壁紙をする
職人さんが同様のことを申していました。大きな声では言えないけれど、やはり違いはあるとのことです。
そして丁寧に、良いものを作られています。ただ、終わりが延びますと、次の工程はどうしても遅れます。
お嬢様、旦那様、申し訳ございません。執事の館・準備委員会は、2月いっぱいを目安にしておりましたが、
3月の最初に掛かる可能性が出てまいりました。また建物の仕上がりを迎えてから、お庭の演出を再開し、
これをはじめの計画よりも大掛かりにする案が出ております。最初のお迎えは造成中になると思われます。
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▼造園係としての笹島(ささしま)が、「名古屋の本宅」の1階、2階のキッチンを綺麗にして参ります。
きょうも「名古屋の本宅」は、建築係がお誘いをした職人が入りまして、少しずつ作業を進めております。
たとえば電気のスイッチ、コンセントの形状はリッチなものに変えて、取り付けの穴の形を変えています。
3階はペデスタルのタイルが仕上がり、ホールの壁紙が入って、見たことのない景色が広がっております。
また「赤の広間」を置きます2階は、ブラウンとレッドの塗装によって表現する部分が、概ね完成をして、
壁紙の職人さんを待つところ。また「ガレ」のシャンデリアが納品されて、これは最後に取り付けします。
いま1階の「白の部屋」に塗装の職人さんが入り、引き戸や壁にN95のホワイトを何度も重ねています。
12月の下旬から、1月の下旬まで、執事の館・準備委員会は「名古屋の拠点」の配送室を整えるために、
調達係と広報係、会計係のリソースを全て「灰の部屋」に注ぎました。介添係の矢田(やだ)は、これを
「模様替えでなく改装」と表し、配送係の清洲(きよす)、喜多山(きたやま)も改善に貢献をしました。
この甲斐があって、配送室は良くなり、笹島や松原が「名古屋の本宅」に入れる時間が戻りつつあります。
すでに平日、塗装のお手伝いができております。また近いうちに1階、2階のキッチンの、人工大理石に
3M社のダイノック・フィルムを施工いたします。日々の進捗は、呟きの上でもご報告をさせてください。
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私たち執事の館・準備委員会は、お嬢様、旦那様に驚きをもって喜ばれるために、日々お仕えしております。
しかし実際には、たくさんの主がいらっしゃいまして、その全てにご満足をいただきたいと望みながらも、
やはり至らなくて申し訳なく思います。全てがだめ、でなく、部分的にだめ、なのが尚さら悔しいのです。
お嬢様、旦那様が、もしこの3行をご覧になって、ああそうだよなあ、みんなに喜ばれるのは難しいよなあ、
とお考えになりましたら、まさにその通りでして、組織や個人など規模の違いはあれど、ご自身のことを
誰かから良いように表現されるのも、悪いように表現されてしまうのも、致し方のないこと、と存じます。
世の中の全ての人に愛され、受け入れられたら嬉しゅうございます。世の多くのひとが、それを望みます。
しかし、それがとても難しいと知ること、そして、それでも人に優しくするのが、大人のやり方なのです。
解決にはなりませんが、敵意を意識するほど傷つき苦しみます。ゆえに、関与しないのが良いと存じます。
驚かれるかもしれませんが、わたくし松原は、悪いように表現なさいますひとを、部分的に敬っています。
見聞きした物事を受け止めて、解釈なさって、表現する。この一連の行為は、センスがないと出来ません。
つまり、ひとの悪いところに気付けるひとは、良いところに気付けるひと、でもいらっしゃると申せます。
ですから松原の場合は、もし悪くいう人がいらっしゃったとして、ご本人には直接申し上げませんけれど、
せっかく良いセンスをお持ちでいらっしゃるのに、勿体ないことをなさっているなあ、などと思うのです。
ひとを幸せにして、喜ばれ、感謝される才能があるのに、それを使わないのは本当に勿体ないと存じます。
話が逸れてしまいましたが、悪い表現をなさいますひとは、ご自身がお気付きになるまでそっとしておき、
もし、万が一、お嬢様、旦那様のティータイムを妨げるようなことがあれば、全力で対応をしてまいります。
私たち執事の館・準備委員会は、お仕えの機会をくださる主のために、できる限りのお仕えをしましょう。
気のせいでしょうか。まだ、冷え込みはいたしますけれども、風に柔らかさや、優しさはございませんか?
まいとし松原、この時期に春を感じて話題にしている気がします。寒さより暖かさを見出す、これもまた、
センスでございましょうか。私たち使用人一同、お嬢様、旦那様の良いところを見つけ、春をお届けします。
寒さも暖かさもあって、話題にするのは自由で、その選択こそセンスで、分かれ道。名古屋の執務室にて。
執事の館・準備委員会
広報係/松原(まつばら)
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私たち執事の館・準備委員会は、おおむね水曜日と、土曜日の夜に、お便りをしてご報告を差し上げます。
こちらをご覧になってのご感想や、ご意見などは Twitter と、このメールへの返信にて承っております。
(ただ返信はお約束できかねますこと、お許しください。)
名古屋のどこかにお屋敷を構えて、お嬢様、旦那様にお仕えしたいと申し出てから10年が経過をしました。
これまでの流れは、過去のお便りにございますが、1,000 以上もございますので、何とぞお許しください。
https://www.butlers-house.net/blog/entries
もし「主の目録」を所有なさいますと、とくべつなお便りのほか、ご予告、お申し付けの先回りが可能に。
ご帰宅の際のカップセレクトも限りなくしていただけます。「金貨」もご活用いただけましたら幸いです。
https://www.butlers-house.net/product?product_id=3887